この事例の依頼主
女性
相談前の状況
本件の依頼者様は、被相続人であるお母様がお亡くなりになる数年前からお母様をご自宅に引き取り、日常生活の面倒を見ておられました。依頼者様は、病院代などお母様のための費用はお母様の預金から支出していましたが、預金を引き出すときは数十万円という単位でまとめて引き出しをしていたため、通帳を見ても何のためにお金を引き出したのかが一見して分からなくなっていました。このような形で引き出された預金は総額で1000万円を超えていましたが、依頼者様はお母様の預金を自分のために使用されていないので、現に残っている遺産を法定相続分に応じて分割する形で遺産分割をされたいという相談に来られました。
解決への流れ
依頼者様は、お母様のための支出に関する領収書をある程度保管されていました。そこで、まずはこれら500枚を超える領収書を項目毎・時系列で並び替えて説明の核となる資料を作り、この資料をベースに領収書が残っていない支出項目を追加するという形で他の相続人への説明用資料を作りました。上記説明用資料をもとに、他の相続人に対してお母様の財産の管理状況を説明した結果、財産の管理状況についてご納得をいただくことができ、依頼者様の希望されるとおりの遺産分割を行うことができました。
相続人のうちの一人が被相続人の生前に財産を管理していたというケースでは、例えば「12月5日に引き出された50万円は、何に使ったのか?」という形で、生前に引き出された預金の使徒が問題となることがよくあります。このような質問に対して適切な回答をすることができないと、特別受益の主張をされたり、不当利得返還請求訴訟を提起されることがありますので、たとえ調停前の話し合いの段階であっても、可能な限り資料を整理し、分かりやすい説明をして相手方に納得してもらうことが望ましいです。食費のように領収書が存在しない支出があることは避けられませんが、単に「1ヶ月の生活費10万円」と主張するよりは、「1ヶ月の生活費のうち領収書があるのは6万円、残りの4万円は食費」と主張した方が他の相続人の納得を得やすいです。