8807.jpg
ブラック企業はハローワークで「求人できない」 この方策で「働く者」は救われるか?
2015年01月24日 11時55分

ブラック企業の問題が取りざたされる中、「ハローワークがブラック企業からの求人申し込みを受理しない」という案が、国の労働政策審議会の分科会で話し合われている。

ハローワーク(公共職業安定所)は現在、基本的にすべての求人申し込みを受理しなければならないことになっている。このため、残業代を支払わないなど、労働基準法違反が繰り返し認められるような会社からの求人申し込みも受理せざるをえない。

そこで、水際で労働者を守る方策のひとつとして、法令違反を繰り返すブラック企業からの求人を受け付けないというアイデアが、議論されているというわけだ。これによって、働く者は救われるのだろうか。労働問題にくわしい今泉義竜弁護士に聞いた。

ブラック企業の問題が取りざたされる中、「ハローワークがブラック企業からの求人申し込みを受理しない」という案が、国の労働政策審議会の分科会で話し合われている。

ハローワーク(公共職業安定所)は現在、基本的にすべての求人申し込みを受理しなければならないことになっている。このため、残業代を支払わないなど、労働基準法違反が繰り返し認められるような会社からの求人申し込みも受理せざるをえない。

そこで、水際で労働者を守る方策のひとつとして、法令違反を繰り返すブラック企業からの求人を受け付けないというアイデアが、議論されているというわけだ。これによって、働く者は救われるのだろうか。労働問題にくわしい今泉義竜弁護士に聞いた。

●ブラック企業に人が集まらないように

「歓迎すべき議論です。若者を使い捨てにする悪質な『ブラック企業』は、あらゆる手段で市場から排除していかなければなりません。ハローワークには、残業代の不払が横行していたり、求人票と実際の労働条件が違っていたりする企業も、少なからず求人を申し込んできています。

そうした求人申し込みを受理しないという方策は、入口をふさいで『ブラック企業』に人が集まらないようにするための一つの有効な手段になるでしょう。ぜひ、具体化してほしいと思います」

むしろこれまで、法律違反を繰り返す企業からの求人を、真面目に経営する企業と平等に扱ってきたことのほうがおかしな気もする。

「そうですね。そもそも、労基法違反を繰り返している企業に対しては、厳罰をもって改善させる。そして、改善しなければ市場から排除するというのが、根本的な対処であるべきです。最低限のルールも守れないような企業に経済活動をする資格はありません」

●「労働基準監督官」は慢性的な人手不足

労働基準法に違反するような企業が、なくならないのはどうしてだろうか。

「労働基準監督官は、慢性的な人手不足にあります。たった1人で3000事業所を担当しなければならないほどです。ですから、労基法違反による実効的な指導や刑事処罰がなされるケースはごくわずか。残念ながら、多くの現場で労基法が『絵に描いた餅』になってしまっています」

では、ハローワークでの求人不受理という水際作戦は、どのくらい効力があるだろうか。

「一定の成果はあるでしょう。しかし、これだけでは不十分です。職安を通さずに求人広告をしている『ブラック企業』は無数にあるからです。いまは、現場レベルの法執行も含めて、ブラック企業への規制を強化する方向こそが求められていると思います」

いまは、ブラック企業に対する規制を強化していく必要があるというわけだ。

「その意味では、同じ労働政策審議会で議論されている『ホワイトカラーエグゼンプション』制度は大問題です。

この制度は、一言でいえば、企業が残業代を払わずに労働者をいくらでも働かせることを可能にするというものです。法案として国会に提出されようとしており、『過労死促進法案』『残業代ゼロ法案』などと批判されています。

ブラック企業をますますのさばらせるような規制緩和は、絶対に許されません」

今泉弁護士は、このように強調していた。

(弁護士ドットコムニュース)

新着記事
一般的なニュースのサムネイル

同性婚訴訟、東京高裁が「合憲」判断 全国で唯一判断割れる結果に…弁護団「きわめて不当な判決だ」

性的マイノリティの当事者が、同性同士が結婚できないのは憲法に反するとして、国を訴えた裁判(東京2次訴訟)の控訴審で、東京高裁(東亜由美裁判長)は11月28日、現行法の規定を「合憲」と判断した。

一般的なニュースのサムネイル

最高裁で史上初の「ウェブ弁論」、利用したのは沖縄の弁護士「不利益にならない運用を」

裁判の口頭弁論をオンラインで実施する「ウェブ弁論」が今月、初めて最高裁でおこなわれた。

一般的なニュースのサムネイル

夫の「SM嗜好」に苦しむ妻、望まぬ行為は犯罪になる?離婚が認められる条件は?

パートナーの理解を超えた「性的嗜好」は、離婚の正当な理由になるのでしょうか。弁護士ドットコムには、そんな切実な相談が寄せられています。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「答え合わせしたい」日テレの拒否は「適正手続」の観点から問題?

コンプライアンスの問題を理由に番組を降板し、活動を休止していた元TOKIOの国分太一さんが、11月26日に東京霞が関で記者会見を開きました。

一般的なニュースのサムネイル

国分太一さん「録音の削除求められた」消さないと違法だったの?弁護士が解説

解散したアイドルグループ「TOKIO」の国分太一さんが11月26日、東京都内で記者会見を開き、日本テレビ側から番組降板を告げられた際、会話を録音しようとしたところ、同席した弁護士からデータの削除を求められたと明らかにした。一般論として、法的に録音の削除に応じないといけないのだろうか。

一般的なニュースのサムネイル

「サケ漁はアイヌ文化の主要な部分」日弁連、アイヌ施策推進法の改正求める意見書

日本弁護士連合会(日弁連)は11月20日、「アイヌの人々の誇りが尊重される社会を実現するための施策の推進に関する法律」(アイヌ施策推進法)の5年見直しに際し、アイヌ集団の権利保障やサケ漁の権利の法整備などを求める意見書を公表した。同法附則第9条の見直し規定に基づき、文部科学大臣や農林水産大臣など関係機関に提出した。

もっと見る